2015年3月18日 (水)

ぽっかぽか

 酒粕を買ってきて甘酒をつくる。板状の粕をちぎりながらお鍋に入れて、煮だってくるのを待つ。沸騰してきたら、お砂糖は控えめにして、塩は一つまみ程度、そして日本酒を結構多めに加える。 

 母は、女がお酒を飲むのを嫌った。

「女の酔っ払いくらい、みっともないものはない」と、常々口にしていた。どこかで醜態を見たらしく、それが後遺症のように頭から離れなかったようだ。飲まないように躾けられて、娘三人、お酒の美味しさを知らぬまま青春時代を過ごした。

 日本酒をたっぷり入れた甘酒を、初めて口にしたのは、三十路も中を過ぎたころ。

「ちょっと寄ってきな。甘酒できてるよ」

 アルバイト先で帰りがけに声をかけてきたのは、定年まぢかのおじさん。

 お雛祭りの日に、女子社員に大サービスの笑顔を振りまきながら、休憩室でご馳走してくれた甘酒が、日本酒入りの大人向け甘酒だった。お酒入っているけれど、煮飛ばしてあるから大丈夫。その言葉と甘さで、お酒を飲んでいる意識はなかった。自分で作るものより風味が良くて、味にこくがあり、美味しかった。

「おかわりあるよ」の声につられて、二杯も飲んで家路についた。

 次の日、身体がぽっかぽかして温かかったわと、お礼を言ったら、意外な言葉が返ってきた。

「お酒飲める口だね」。結構たっぷりとお酒を効かせて作ったのに、自転車で帰れたんだから、弱くはないと言うのだ。

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 それ以来、お酒と仲良く現在に至る。

  口当たりがなめらかになるように、お玉で酒粕のかたまりをのばしながら、糀の湯気で二月の寒さも一緒にとかす。

ごちそうさま日記を読んでくださったエッセイグループ「ごめんあそばせ」の方々が、「ごちそうさま」をテーマにしたエッセイを送ってくださいました。最初の作品「ぽっかぽか」をご紹介いたしました。

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